中国・アジア進出後における現地資金調達の前提条件
2014年12月8日
東南アジア諸国への進出支援を行う中で、「事業プラン達成までのロードマップとコストは、予想の約3倍見なければならない」という通説の裏には、政治リスク、法規制の改正、許認可にかかる時間・不確実性、商慣習の違いなどの要因が挙げられる。現地進出企業が損益分岐点クリア前に資金ショートを起こすリスクは、国内よりもはるかに高い確率で発生することを前提として準備しておかなければならない。以下、現地での資金調達手段を俯瞰することで、再度アジア進出前に見直すポイントを整理いただきたい。
資金調達手段は、調達相手先としてグループ会社、金融機関、他社の3つに分類できる。グループ会社とは、主に親会社からの増資、融資をさす。金融機関とは、日系金融機関現地支店・法人、現地金融機関をさす。そして他社には、事業パートナーによる増資・融資、商社による売掛回収サイトのリクス回避、リース会社によるリースバック方式の利用などが含まれる。それぞれの特徴を下表にまとめる。
上記表で整理したように、それぞれの資金調達手段はメリット・デメリットを含んでおり、現地での事業計画に基づく資金繰りの方向性を進出前に決定しておく必要がある。そのステップとしては、
1. 海外進出事業計画の策定と必要資金の詳細な算定
2. 上記の約2‐3倍の必要資金がかかる前提で資金繰り表を作成
3. 資金繰りの不足分、タイミングを見ながら資金調達プラン(だれが、どこから、相手方にたいする何を担保/メリット提供して資金を引っ張ってくるのか?)と経営戦略のバランスを考えながら立てていく。
その際、以下のような質問に自問自答していきたい。
・国内親会社に資本力、安定性はあるのか?
・日本国内と現地の架け橋となる人員は確保できているのか?
・現地商慣習と当該ビジネス収益構造は理解できているのか?
・またそれにどのように適応できるのか?
・現地企業の競争に勝つための優位性はあるのか?
・現地販路開拓のプランは描けているのか?
上記事前調査による資金繰りのシミュレーションを行っておくことは、現地事業展開で必要とされる時間とコストを要する経営戦略を安定して実行していく「企業体力」と「メンタリティー」を維持するために非常に重要である。
こうすることにより浮き彫りになるのは、国内実績の有無である。金融機関、それ以外の他社と現地資金繰りにおける提携を行うためには、結局は日本国内の経営状況に帰結する。その意味で、中国・アジア市場の資金繰りを左右するのは、日本国内の安定した基盤があるかないかという当たり前の結論となり、現地事業展開にあたり冷静に見つめなければならないポイントとなる。
(江本 真聰)
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