中国投資家の日本企業への投資
2013年11月29日
昨年の秋以降、政治的な問題により日中関係が冷え込んでいるという報道が続いている中、今年の10月下旬に中国の投資会社10数社と接触し、日本企業に対する投資提案を行ったところ、彼らの投資姿勢は、以下の特徴で前向きに行いたいというものであった。
1.投資の背景
中国の第12次5カ年計画の中で掲げられている、消費主導型成長への転換、新しい成長産業の育成、都市化の推進による地域振興という取組みの中で、産業にとって最も重要なことは新しい成長産業の育成であり、このことを達成するためには日本企業の技術力が欠かせない。日本企業も市場を開拓する上で、中国市場への進出が不可欠であり、日中両国は産業を融合するための最良のパートナーとなりうる。また、アベノミクスの三本の矢である公共事業、金融緩和、成長戦略を実行することによってデフレから脱却し、経済成長が見込めることから、日本企業への投資タイミングとしては今が最適であると考えている。
2.注目セクター
第12次5カ年計画では、①省エネ・環境保護、②新世代情報技術、③バイオ、④最先端の製造業、⑤新エネルギー、⑥新素材、⑦新エネルギー自動車の7業種が戦略的新興産業と位置付けられた。投資家もこれらの業種に特に注目している。その中から弊社では、中国の環境問題の深刻化に着目し、クリーンエネルギー、次世代交通、スマートテクノロジー、汚染処理、リサイクル、省エネという6つの分野を投資領域として提案した。その中でさらに興味のある分野として、多くの中国の投資担当者が挙げたのは、大気汚染処理、汚水処理、土壌処理、リサイクル技術、次世代自動車、省エネ関連であった。
3.投資スキーム
いきなり日本の企業に投資するよりも、まず上記のセクターの中の、核となる中国の会社に投資して、その会社の価値を上げるための日本企業への投資というスキームをとることを好む。日本企業へ投資する時から、その中国企業とのM&Aによるエグジットを見込んでの投資と考える。それだけ日本企業への単純な投資については、リスクが大きいと考えている。また投資会社が日本企業に投資する場合、単独投資ではなく中国の上場企業と共同で投資し、リスクシェアを行うことが多い。投資した日本企業投資のエグジットをその上場企業とのM&Aで想定する場合、エグジットがさらに容易となる。中国での事業展開によって企業価値を高める日本企業にとっても、中国上場会社のもつ事業力、信用力、企業間のつながり等は大きな武器となる。
4.投資の視点
まず、中国の成長市場で発展する可能性の事業であるかどうかを重視する。投資後に、日本企業のもつ技術、製品、サービス、管理、バリューチェーン、ビジネスモデルを基盤として、中国市場での優先順位が高い事業を選択し、コストの効率を意識し、研究開発や海外展開機能を強化することで、中国での事業を効率的に行うことによって、投資した日本企業の価値を高めることを想定する。5.投資期間
投資からエグジットまでの期間については、2~3年間程度を想定している投資家が多い。投資した後に、投資先企業の中国での提携先を探すのではなく、あらかじめパートナーとなる中国企業と事業シナジーのある日本企業に投資するので、投資先企業の価値を高める時間も、エグジットに要する時間も長くはかからないという考えである。弊社は環境・エネルギー関連のエキスパートであり、日中両国の橋渡し的なコンサルティング実績が多数ある。そしてこれらの中国投資家の投資戦略に沿うような投資先候補の日本企業と数多く接触しているので、彼らの日本におけるパートナーとして、現在M&Aのマッチングの事業を行っており、共同ファンドの組成も計画している。
(経営コンサルティング部)
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