中国株価は底打ちか?
2013年9月6日
日本テピアでの日々の業務のなかで、海外進出を検討されている企業様のご相談を多々受けます。東南アジアへの進出・投資に意欲的な企業様を多く見受ける一方、中国への投資意欲の減退を感じます。私は数ヶ月前まで証券会社に勤めていましたが、そこでも同じように感じていました。昨年から今年にかけて、インドネシアをはじめとした東南アジア株式へ投資をしたいという投資家の声が増加し、証券各社でも東南アジア株式の投資信託の新規設定が増加しました。その反面、中国株式へ投資したいという顧客の声は減っていきました。
株価にもこの流れが顕著に現れています。インドネシアの代表的株価指数であるジャカルタ総合指数は今年5月に史上最高値を更新し、5,200ポイントを超えました。リーマンショックの影響を受けているとは言え、2008年10月には1,100ポイント台であったことを考えると、その数値の伸びは目を見張るものがあります。それに対し、中国の代表的株価指数の上海総合指数は2007年10月に6,124ポイントという史上最高値をつけましたが、その後株価は崩れ続け、2012年末には1,950ポイントを割りました。今年2月には2,400ポイント台まで持ち直す場面もありましたが、6月には再度1,950ポイント台まで下落し、軟調に推移しています。
しかし、本当に中国は市況が示すように投資先として魅力のない国となってしまったのでしょうか。以下、各国の経済状況を比較し、投資先としての中国の現状を考察しました。
今年8月に発表された中国の経済統計では、中国経済が勢いを取り戻しているとの見方ができる数字が並びました。2013年7月の各種経済指標では輸出は5.1%増(2013年6月は前年同月比3.1%減)、輸入は10.9%(2013年6月は前年同月比0.7%減)、鉱工業生産数が前年同月比9.7%増(2013年6月は前年同月比8.9%増)という結果でした。また、消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.7%増で、6月から横ばいに推移しておりインフレは安定しているという見方ができる数字でした。さらに、8月22日に発表された中国製造業購買担当者景気指数(PMI)の速報値は50.1と4ヶ月ぶりの高水準という数字でした。
また、株式投資において割安性を見るための指標であるPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)を見てみると、8月の上海総合指数は予想PERで9.2%前後、PBRは1.4倍前後となっております。インドネシアのジャカルタ総合指数は予想PER13%前後・PBR3.6倍前後、インドのSENSEXは予想PER13.7%前後・PBR2.3倍、フィリピンのフィリピン総合指数は予想PER17.1%前後・PBR3.2倍前後、シンガポールのST指数は予想PER14%前後・PBR1.5倍前後、日本の日経平均は予想PER17%前後・PBR1.3倍前後でした。PERは新興国ほど高くなる傾向はありますが、先進国の日本やシンガポールと比較しても、中国株式は割安であると見て取れる数字だと思います。その他、上海総合指数のEPS(一株当たりの利益)の伸びの過去数年間の推移と株価チャートの他国との比較からも、中国株式が割安であることを示されています。
さらに、8月の株価の推移を見てみると、世界の株式市場は、米国の債務問題やシリア情勢緊迫化による地政学リスクの高まりなどから、調整色を強めるなか、上海総合指数は先月末の7月31日1,993ポイントから8月27日2,103ポイントへ110ポイント上昇しました(同期間の香港ハンセン指数は2,183ポイントから2,187ポイントへとほぼ横ばい)。同期間の他のアジア圏の株価指数はジャカルタ総合指数が4,610ポイントから3,967ポイントに下落、インドSENSEX指数は19,345ポイントから17,968ポイントに下落、フィリピン総合指数は6,639から5,916ポイントに下落と、軒並み大きく下落しております。また、シンガポールのST数は3,221ポイントから3,034ポイントに下落、日経平均も13,668円から13,542円へと下落しました。この期間での株価の目立った上昇は、世界の主要株式指数のなかでも上海総合指数だけでした。また、米国の量的金融緩和縮小観測が囁かれ新興国市場ほど、株価の下落が激しいなか、中国企業への投資先として海外投資家に対しても門戸が開かれている香港ハンセン指数はほぼ横ばいでした。
以上の中国と他国の経済状況の比較から、今年の秋以降、私は個人的に現在割安に据え置かれている中国株式に注目していきたいと考えております。もちろん、直近1ヶ月の間に発表された経済統計や、それに伴う株価の動きだけで中国株式が割安だと判断するのは軽率だとの意見もあると思います。しかし私は、割安に放置されている中国・香港株式に世界の投資資金が戻ってくるのは、意外と近いのではないかと考えております。
8月23日の日経新聞の一面に“中国事業の売上高、尖閣前に戻らず3割”という記事がありました。その文言だけを見ると、中国事業にマイナスのイメージを持ってしまいそうですが、同アンケートでは41.9%の日本企業が問題発生前の水準にまで回復、18.6%の日本企業が問題発生前の水準を上回るとも回答しています。中国の景気減速や芳しくない日中関係が報道されることが多い今日ですが、風潮に流されることなく、中国の動向を見極めていきたいと思います。
(河村真吾)
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