気候変動交渉において日本がイニシアチブをとっていくために
2014年10月15日
9月23日、ニューユークの国連本部で開催された国連気候変動サミットでは、安倍首相が地球温暖化対策に関し、①途上国支援、②技術革新と普及、③国際枠組みへの貢献――の3つを柱とする日本の取り組みを紹介した。
この中で、2013年から3年間で約160億ドルの支援を途上国に実施するという約束を、1年半あまりで達成してきたことを強調し、今後3年間では気候変動分野で1万4千人の人材育成を約束した。また、「二国間クレジット制度」や「適応イニシアチブ」を活用して、途上国の対処能力の向上を包括的に支援することを表明した。
2015年にパリで開催されるCOP21において、2020年からの気候変動に対する新たな枠組みを採択することが予定されている中、今回の気候変動サミットは、新たな枠組みの構築に向けて、日本の貢献を訴え、また各国の政治的意思が首脳レベルで確認されたサミットとなった。
日本は、2020年からの気候変動に対する新たな枠組みの構築に対し、世界への貢献や日本の技術力をもって、交渉のイニシアチブを取っていきたい考えであり、温室効果ガス削減というキーワードでこれまでも途上国や国際社会に対する支援を重ねてきた。
一方で、国内では原子力発電所の長期停止を受け、いつまでにどの程度の温室効果ガスを削減するのかといった自らの数値目標は明言できずにいる状況である。
そうした中、国連気候変動サミットの翌日、九州電力は、送電線の受け入れ容量を上回り電力供給が不安定になる可能性があることから、9月25日から再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に基づく契約の受け付け中断を発表し、北海道電力、四国電力、東北電力、沖縄電力の各電力会社も同様に買い取り契約の手続きを中断する事態に陥っている。
再生エネルギーの普及により、エネルギー自給率の向上、地球温暖化対策、産業育成を図ることを目指して、2012年7月からFITがスタートしたが、全国で急速に太陽光発電事業が増加し、送電網の整備が追いつかず、急ブレーキがかかった状況だ。
今年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画では、再生可能エネルギーの目標についてのみ「2030年に約2割」という目標値が参考として脚注に記されたが、この目標を引き上げ、再生可能エネルギーで原子力発電を代替するべきだとの声も大きい。しかし、固定価格買取制度を開始して以降、設備認定を受けた事業の大部分が太陽光発電に偏重し、また電力会社の環境整備も追い付いていないことが浮き彫りになっており、再生可能エネルギーを安定した電源として位置づけるには、まだまだ不安定な状態である。
このまま原発の再稼働がされない中で、再生可能エネルギーの普及もバランスを欠いたまま停滞していくとすれば、気候変動交渉においても積極的な目標設定ができず、これまでの国際貢献に対する評価も薄れていってしまうのではないだろうか。
気候変動交渉に置いても自ら意欲的な目標を示し、国際交渉でイニシアチブを取っていくためには、原発の再稼働の是非も含め、また固定価格買取制度内での再生可能エネルギーの構成バランスも含めた、電源の構成の明確な数値目標を示し、日本のエネルギー構成を早急に安定させていく必要があるだろう。
(阪野 ももこ)