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 タイ 「原子力発電所建設計画をめぐるその後の動向」

2011年5月9日

3月11日に発生した東日本大震災による福島第1原子力発電所事故の発生を受け、タイにおいてもエネルギー供給戦略の方針転換に関する動きが活発化している。以下に直近の動きをまとめた。

アピシット首相が議長を務める国家エネルギー製作委員会(NEPC)は4月27日、2020-2021年に予定されていた1,000MW規模の原子力発電所2機の建設計画を3年間延期する旨、決定した。4月30日付の現地英字紙バンコクポストによると、この政府決定を受けタイ電力公社(EGAT)スタット総裁は、2機のコンバインドサイクル火力発電所を建設して代替供給する方針を既に明らかにしている。

天然ガス炊き火力発電所による代替は、LNGのさらなる需要増につながる。足元では、3月に発生した東日本大震災の影響から世界的なLNGの需給が逼迫している状況だが、タイ石油公社(PTT)は「LNG輸入量は、中東や豪州からの輸入増により2021年までに現行の2倍の1000万トンまで増やせる」(プラサート社長)として、影響はないとの見通しを示している。

5月4日にはソンクラー県の860MW規模の天然ガス火力発電所建設に関する環境影響評価(EIA)が国家環境委員会(NEB)によって承認された。火力発電所建設に対しては地元住民の反対が大きく、マプタプット工業地域における環境問題発生以降、タイ政府も発電所建設に慎重な姿勢を示してきたが、今回のNEBの案件承認の背景には、原子力発電所建設計画の延期決定と代替手段確保の必要性という事情があるという見方も可能だ。

また、タイ国内での原発建設のみならず、隣国であるベトナム・ニントゥアン省で進められている原発建設計画に対する反対運動も起きている。ベトナム・ニントゥアン省はタイ東北部のウボンラチャタニ県から800キロに位置しており、事故が起きた場合のタイへの影響を懸念する反核団体が、バンコク都内にあるベトナム大使館前で4月26日、建設計画中止を訴えるデモンストレーションを行っている。

(石毛 寛人)

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