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 中国、「電力化率」引き上げに本腰

2016年6月14日

中国国家能源局によると、2015年の中国の電力消費量は5兆5500億kWhを記録し対前年比で0.5%の増加にとどまった。世界最大の電力消費国であることに変わりないが、1人あたりの電力消費量は、米国や日本、欧州先進国などと比べると大きく下回っている。主要国の水準を下回っている電力指標がほかにもある。一次エネルギーに占める電力の比率を表す「電力化率」だ。中国政府は、一次エネルギーの電力への代替を進め、エネルギー消費革命を推進するとともにエネルギーのクリーン化を促進する方針を打ち出した。

国家発展改革委員会をはじめとした8省庁は2016年5月24日、「電力代替の推進に関する指導意見」(2016年5月16日付)を公表した 。それによると、2016~2020年の「第13次5ヵ年計画」期において、エネルギー最終消費段階での粉状の粗悪な石炭や燃料油の使用を止め、標準炭換算で1億3000万トンを電力で代替するという目標を掲げた。これによって、石炭の消費総量に占める電力向けの割合は1.9%、また最終エネルギー消費に占める電力の割合は1.5%上昇し約27%に達する。ちなみに、主要国の電力化率は、フランス49.8%、日本42.4%、米国38.8%、英国36.9%、ドイツ32.9%(いずれも2012年実績)となっており、中国を大きく上回っている。

中国では、大量の石炭や燃料油の燃焼にともない大気汚染が深刻化している。中国は毎年7~8億トンの「散焼煤」と呼ばれる粗悪な粉状の石炭を消費。暖房用のボイラーや工業用の小型ボイラー、農村部などで使われている。中国では毎年、30億トンを超える石炭が消費されていることから、こうした粗悪な石炭は全体の20%を占める。これだけの量の石炭が、何の浄化処理も施されず燃やされるため、大量の汚染物質が大気中に放出される。このほか、自動車や航空機の補助動力装置などで使用される燃料油も重大な汚染源となっている。

中国では石炭消費のほぼ半分が電力向けとなっている。また電力の約4分の3が石炭火力によって賄われている。石炭火力のシェアをさらに引き上げることに疑問がないわけではないが、発電に使われている石炭の品質管理が徹底されているため、「散焼煤」の使用を減らすためにも石炭火力発電を増やし電力化率を引き上げた方が合理的という判断が働いている。

中国工程院の倪維斗院士によると、中国の石炭火力発電所のクリーン度は世界的な水準に達しており、問題は石炭消費の残りの半分を占める工業用と生活用の石炭だ。倪維斗院士によると、中国には現在、約70万台の工業用ボイラーがあり、これらの燃焼効率は石炭火力発電所のそれを大きく下回る。しかも、排出物の厳格な処理・汚染管理が行われていない。家庭用も同様で、家庭で使用される5000万トンの石炭の燃焼にともなって大気中に排出される汚染物質の総量は、火力発電所で使用される10億トンの石炭に等しい(倪維斗院士)。

今回公表された指導意見では、4500億kWhの電力消費増加を見込んでおり、これによって煤煙と粉塵が約30万トン、二酸化硫黄が約210万トン、窒素酸化物が約70万トン、それぞれ排出が抑制されると試算している。

それでは、具体的にどのような方策によって、こうした目標を達成しようとしているのか。指導意見では、以下の4つの重点分野が提示されている。
①北方地区の住民の暖房
②生産製造分野
③交通運輸分野
④電力の供給・消費分野

このうち交通運輸分野では、電気自動車の充電インフラの建設をサポートし、電気自動車の普及・応用を推進するとしている。電気自動車を含めた中国の「新エネルギー自動車」(新能源汽車)の2015年の生産台数は約34万台、販売台数は約33万台となり、それぞれ前年に比べて3.3培、3.4倍という高い伸びを示した。2016年の販売台数は70万台に達すると見込まれている 。また、電力の供給・消費分野では、再生可能エネルギーの占める割合が比較的大きいグリッドにおいて電力貯蔵装置の普及・応用をはかり、系統調整能力を引き上げるとしている。

中国政府は、指導意見で掲げた目標を達成するため、政策面で各種の支援策を講じる。主要先進国の水準まで電力化率を引き上げるのは一朝一夕にはできないが、生活改善や産業活性化、環境改善の面からも電化の促進は中国にとって避けて通れない道だ。

(窪田 秀雄)

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