中国経済は失速していくのか?
2015年10月13日
上海総合指数は2015年6月12日に5166ポイントをつけたのをピークに下落し、10月9日現在では3183ポイントと、約4ヵ月間で40%下落したことになる。また、2015年6月以前の1年間の上昇率は、約150%になっていた。
上記が中国経済力を反映したものでないことは確かである。例えば、2013年の中国の経済成長率7.4%と電力消費量伸び率7.5%はほぼ一致しているにも関わらず、2014年の経済成長率7.7%であるが電力消費量伸び率は3.8%にとどまる。また、貨物輸送量にいたっては、2014年1月-11月は前年比の3.2%減となっている。この数値に併せて、上海市場と香港市場の相互乗り入れによる海外資金の流入や、複数回にわたる利下げによりだぶついた資金を中国国内投資家が利用している事実などから、今回の株価下落はバブルの調整局面と見るべきである。
この局面を中国経済の崩壊が始まる兆候として国内外のメディアが取り上げ、中国国内資本家による国外への資本流出を加速させている。2014年の資本流出額は年間で4200億ドルに上り、1998年12月以降最大である。中国の人口は13.5億人であり、一国全体の雰囲気が生み出す経済への影響と舵取りの難しさは日本の比ではない。つまり、日本のバブル崩壊に倣いハードランディングを試みることはありえない。その裏づけとして、中国政府が約10年前から内需拡大をその重点項目として掲げている。
内需拡大は、長期安定型の資本を国内に蓄積させることが至上命題である。つまり、中国国内外資本家が長期投資を中国に行わせる必要があり、その逆の施策はあり得ない。その投資条件は、政治的安定なのか、不動産市場の活性化なのか、株式市場の活性化なのか、内需拡大におけるインフラ整備なのか、アジア全体を巻き込んだ発展施策なのか、それらをどの程度どの割合で混ぜ合わせるべきなのか、を模索しているのが今の段階と言える。このためにトライアンドエラーを短期間で繰り返すことができるのが、一党独裁という中国の最大の強みである。今回の株価下落に対する政府の買い支えというのは中国国民にとって信頼のおけるものであったにも関わらず、一定の下落が止まらなかったのは、証券会社が導入した自動売買システムによる負の連鎖であるところが大きいと言われており、中国政府の信用力の問題ではないと考える。
中国政府は今後の経済状態を「新常態」という言葉で表している。中国国内で完結できなくなった経済相互関係は、中国資本家の動きに流動性を与えるために、これまでと違って比較優位的な中国市場である「新常態」を見つけていかざるを得ない。昨年12月の中国工作会議にて2015年度の経済運営の政策基調のポイントは、これまで以上に国内外の資本の流動性を確保した上で、バブルを監視・規制しながら、内需拡大を推し進めることになった。現在の中国は、グローバルではなく、より中国市場に資本を集中するドメスティックな動きを見せることで、内需を通した経済力を増加させていくという手堅い経済成長を行うための条件を慎重に見極めており、経済成長率は失速しても、4-6%の安定的な長期経済成長にソフトランディングする可能性は高いと考える。
(江本 真聰)
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