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 中国政府、野放図な太陽光発電プロジェクトの規制を強化

2014年11月11日

「棄風」――。馴染みのないことばだが、「中国」と「棄風」で検索をかけるといろいろ出てくる。風力発電所が正常に稼働しているにもかかわらず、送電能力不足により送電ができずにせっかくの電気を棄ててしまうことだ。

中国の2013年の風力発電(系統連系)量は1350億kWhとなり、火力発電、水力発電に次いで第3位の電源となった。しかし系統側の理由(能力不足)と現地での電力需要不足によって162億kWhが「棄風」された。「棄風」率は10.7%にも達した。内モンゴルや東北地区では35~40%に達する場所もあるという。今年上半期(1月~6月)の「棄風」率は8.5%となり、前年と比べれば多少は改善されているものの、経済損失は35億元に達した。「棄風」率が高いのは、吉林(19.75%)や新疆(17.25%)、黒竜江(15.52%)、河北(14.59%)といった省・自治区だ。

その中国で最近話題になってきているのが「棄光」だ。「棄風」が風力発電を対象としているのに対して、「棄光」は文字通り太陽光発電だ。既報のとおり、国家能源局の関係者によると、2016年からスタートする「第13次5ヵ年」計画期の風力発電目標は2020年時点で2億kW、太陽エネルギー発電目標は1億kWに設定される見通しだ。

国家能源局新エネルギー・再生可能エネルギー部の史立山副部長は今年8月18日、甘粛省で開催された「第5回中国(甘粛)国際新エネルギー博覧会」において、「棄風」と「棄光」が深刻な地区では開発規模を抑える必要があるとの考えを示した。同氏は、「棄風」や「棄光」問題がエネルギーに関する計画、建設、運転の矛盾や問題点を明らかにしたとしたうえで、再生可能エネルギー資源が豊富な地区の政府は発電所の建設には積極的だが、有効利用については重視していないとの問題点を指摘した。

そうしたなかで国家能源局は、10月9日付(第445号)、10月28日付(第477号)と矢継ぎ早に太陽光発電に関する通知を行った。

このうち10月9日付「太陽光発電所の建設・運転管理工作の一層の強化に関する通知」 では、太陽光発電所と送電線の建設の調和がとれていないことに加えて、プロジェクトの基準や品質管理に問題があることなどを指摘したうえで、全国の太陽光発電所の建設プロジェクトを統一的に計画することなどを盛り込んだ。

また、10月28日の「太陽光発電所の投資開発秩序の規範に関する通知」 では、太陽光発電市場が急速に拡大しているなか、プロジェクトの投資開発のポイントにおいて資源配置が不公正であることに加えて管理が標準化されていない、各種の異なった投機的な利益がもたらされているといった問題が生じていると指摘。太陽光発電開発における投機行為に終止符を打つための要求を通達した。

再生可能エネルギーを利用した中国の発電計画は半端な規模ではない。風力発電に限っても、2020年の2億kWをステップとして、2030年には4億kW、2050年には10億kWまで拡大するという見通しさえある。しかし、再生可能エネルギーの間歇性ゆえ、ベースロードとして位置付けているのは原子力発電だ。国家発展改革委員会能源研究所の所長を務めた周大地・中国能源研究会常務副理事長は、2050年時点では原子力発電設備容量が4~5億kWに達すると見込んでいる。

再生可能エネルギーと原子力発電――。石炭からの脱却をはかる中国が期待する2つのエネルギーだが、どちらも手放しで推奨されているわけではない。原子力発電については、福島事故を受け安全面での懸念から計画がスローダウンしたが、再生可能エネルギーも規模が拡大するにしたがって内在する問題が鮮明になってきた。風力発電だけでも2050年に10億kW、原子力5億kW。実現できるかどうかは不透明だが、中国は本気だ。

(窪田 秀雄)

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