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 「閃辞族」時代の中国、転換を迫られる日本企業の現地人材戦略

2013年12月11日

人材市場の変化
中国では近年「閃辞族(せんじぞく)」が話題になっている。短い間に転職してしまう新卒社会人のことである。中国で、新卒社会人が3年以内に「2回以上」転職するのは6割に近く、「3回以上」は3割を超える。中国で現地生産から現地販売体制への転換を模索している日系企業にとって現地のニーズ、商習慣、マーケットに詳しい優秀な現地人材の確保は極めて重要な課題である。

日系企業の人気下落
しかしながら、中国では日系企業の人気が下落しており、優秀な新卒人材の確保が難しくなりつつある。2013年の大学生就職先人気ランキングの TOP50で、文系はソニー1社で、理系は1社もない状態に陥った。国有企業と欧米系企業の人気が高く、半々になっている。特に欧米韓企業への人気が高い。文系では上位25位の中で欧米韓企業が14社を占めた。文系ではグーグルが1位、P&Gが3位、アップルが4位、ウォルト・ディズニーが7位、イケアが8位、スターバックスが15位、シティバンクが19位、ユニリーバが21位、BMWが24位である。韓国企業のサムソンは25位である。理系では上記主要企業にマイクロソフト、VW、シーメンス、BMW、GEなども人気が高い。日系企業は文系でソニーが38位である。

採用から評価、育成までの抜本的な改善  
日系企業は激化しつつある中国市場で競争力を強化するには、現地法人の人材戦略を抜本的に改善しなければならない。採用基準の見直し、日本留学経験者の積極的な登用、評価制度の改善、日本人駐在員の長期化などが考えられる。

「日系企業はなぜ日本語を採用基準にするか」と、中国の知人から良く聞かれる。日本企業の本社は現地法人への権限移譲が限定されており、日頃本社との業務連絡が多い。また現地で日系企業間の取引が多いのも一因である。しかし、大卒生が年間700万人に上る中国でも、日本語ができる人材は少数に限る。日本語を採用基準に設定した場合、多数の優秀な人材は応募しなくなる。

また、中国現地で積極的に日本留学経験者を登用することも有効な方法である。日本の大学には現在9万人弱の中国人留学生が在学しており、在職中の中国人も多い。中国人留学生は日本の社会と企業文化に詳しく、日本人とのコミュニケーションにも慣れている。その上、多くの中国人留学生は日本での留学経験を最も活かせるのは日系企業であると考えており、定着率の向上に繋がる。

さらに、現地法人の人事評価制度の改善も必要になる。中国には多国籍企業が多く、多様な評価システム、給与システムが併存する。日本本社の制度をそのまま現地に「適用」するのではなく、いかに現地の人材市場に「適応」するかが課題になっている。優秀な人材の採用と定着度アップに魅力的な評価と給与システムが欠かせない。

一方で日本人社員の中国勤務の長期化を進め、中国ビジネスのスペシャリストを育成することも重要だ。中国で留学している日本人留学生は韓国人留学生(6.3万人)の3割に止まる。日本人留学生が少ないなか、中国に詳しい日本人スペシャリストの育成には、長期滞在、社内研修強化などを含めた企業側の努力が必要であろう。

(金 永洙)

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