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 中国、エネルギー・電力消費の総量規制に踏み出す

2013年2月12日

深刻な大気汚染が社会問題化している中国。一次エネルギー消費に占める石炭の割合が70%を超えるという過度の石炭依存と無関係ではない。  

中国政府は、石炭依存を如何に減らすかということに腐心している。そうしたなかで国務院は1月23日、各省や自治区等の関係機関に対して同1日付けで「エネルギー発展『第12次5ヵ年』規画」(「能源発展“十二五”規劃」)を通知したことを明らかにした。  

それによると、中国の一次エネルギー生産量と消費量は2005年から2010年にかけて、それぞれ年率6.6%の伸びを示した。発電設備容量も年率13.3%で増加し、05年には5億2000万kWだったものが10年には9億7000万kWまで拡大した。それでも、1人あたりのエネルギー消費量、電力消費量は、OECD加盟の先進国と比べるとまだかなり低い水準にある。

すでに「第12次5ヵ年」期(2011~15年)も3年目に入ったが、「エネルギー発展『第12次5ヵ年』規画」では複数の目標が具体的に示された。このうち拘束力を持った目標は5項目、拘束力を持たない予測目標が18項目となっているが、予測目標の中でも半強制的な目標になっているものもある。  

まず、エネルギー消費総量と効率の目標が掲げられた。エネルギー消費総量は2015年時点で40億㌧(標準炭換算)、電力使用量6兆1500億kWh、火力発電所の電力供給石炭消費量323g/kWhなどの目標が示された。いずれも全体としては予測目標の位置づけであり拘束力を持たないが、エネルギー消費総量と電力使用量については、別の仕掛けがある。各地の経済社会発展の水準や地理、資源の特徴等を踏まえ、エネルギー消費総量と電力消費総量の抑制目標を各省や自治区、市に配分し、その実施を省レベルの人民政府の責任にするというものだ。当然、目標を達成しなければ責任を問われることになる。  

最初から拘束力を持った目標として示されたのは、非化石エネルギーがエネルギー消費に占める割合(11.4%)、GDPあたりのエネルギー消費量(0.68㌧標準炭/万元)、GDPあたりの二酸化炭素排出量の削減率(5年間で17%)、石炭火力発電所の二酸化炭素排出率(2015年時点で1.5g/kWh、10年から12.4%減)、石炭火力発電所の窒素酸化物排出率(2015年時点で1.5g/kWh、10年から15.1%減)。  

発電設備については、いずれも予測目標だが、2015年時点で石炭火力9億6000万kW、水力発電2億9000万kW、風力発電1億kW、天然ガス火力5600万kW、原子力発電4000万kW、太陽光・太陽熱発電2100万kW、バイオマス発電1300万kW、合計で14億9000万kWとしている。

このほか同規画では、電力体制改革を引き続き進める方針を示した。具体的には、電力市場体系の構築を加速し、送電と配電の分離試験プロジェクトを着実に進めるとともに、独立した電力取引機関を設立する。また、区域や省レベルの送電網の範囲内で市場取引プラットフォームを立ち上げ、いくつかに分けて大口ユーザーに開放し、独立した配電企業と発電企業と直接取引させる。  

中国は、エネルギーに関連した法整備にも乗り出す考えだ。エネルギー法の制定を急ぐとともに、石炭法の完成と電力法の改定を行うほか、石油や天然ガス、原子力等の分野の立法措置も進める。また、国務院のエネルギー主管部門に対しては、電力や石炭、天然ガス、再生可能エネルギー、エネルギー科学技術、原子力発電等の特別規画を制定し、同規画に定められた目標や任務を着実に実施することを要求した。

同規画は、中国のエネルギー政策が大きな転換点にたっていることを如実に示している。

(窪田 秀雄)

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