中国の少額貸付市場の可能性
2012年7月12日
近年、中国の中小企業への少額貸付が注目を集めている。もともと中国では非金融機関による貸付については制限されており、商業銀行がこの貸付業務を担っていた。当然、商業銀行としては、「大企業・大プロジェクト」といった有力な担保能力に対する貸付を中心としており、事実上、中小企業への少額貸付の多くは非合法な形で非金融機関によって担われてきた。
中国の金融ライセンスは、「商業銀行」、「投資銀行」、「金融リース」、「少額金融」の4つのライセンスに分けられる。中国の「少額金融」とは、一般的に中小企業、個人経営者など、銀行から融資を受けにくい企業・個人を相手に貸し付けを行う金融ビジネスである。このライセンスによれば、企業の貸出し法定金利は市場金利の4倍まで(現時点で約25%)と規定されているが、非合法に業務を行ういわゆる地下銀行の金利は、約50%~150%までと幅広い。
資金繰りが困難である中小企業にとって、こうした高金利の債務事体が、その維持及び成長を阻害しているという現状に、中国当局も問題意識を持っている。特に、2010年から2011年にかけて、浙江省温州で起こった中国民間企業の資金危機は、今なおその波紋を広げつつある。
中国では、下表に示す通り、GDP及び一人当たり所得、インターネット普及率、エネルギー消費量も過去10年間で2倍以上の速度で伸びている。
(各種統計資料より)
こうしたなかで、中国の中小企業数は、日本の中小企業数の約10倍に相当する4200万社となり、中国企業の99.8%を占めている。一方で、現地新聞報道によると、中国の中小企業の平均寿命は約3年ともいわれている。その原因としては、付加価値の低い労働集約型の事業形態、人件費の高騰、多国籍企業の進出による競争の激化などが挙げられる。いずれにしても、中国経済を支える中小企業の産業競争力をつけていくことが急務となっている。
中国銀行業監督管理委員会は2008年5月、中央銀行と共同で「少額貸付会社試験に関する指導意見」を公布し、少額貸付会社の位置づけを明文化した。さらに設立、資金の出所、資金運用、監督管理などについても規定した。これにより少額貸付会社の合法性がはっきり認められ、中国各地で少額貸付会社の設立が活発化している。それでも、少額融資規模は銀行融資の1%に過ぎないのが現状である。
現在、少額金融ライセンスは、外資独資企業にもその取得が認められており(地域毎の規定による)、今後合法的な少額金融市場は競争が激化していくものと考えられる。また、少額金融を業務として行う際の運営管理、審査、システムなどのノウハウは、中国市場に十分蓄積しておらず、この面で日本企業の役割が期待されている。
【参考】独資での少額金融ライセンス取得について
※現時点での詳細であり、内容は変化する可能性があります。
■法律
全国レベルで小額金融会社の設立条件、運営管理などに関する国家レベルの法律はなく、現状では各地域の独自実施細則に委ねているのが実態である。
■事業展開地域
少額金融会社ライセンスを取得すれば、基本的にその地域のみでは事業展開が出来る。ただし、融資を受けたい企業自ら小額金融会社の所在地で受け皿とする会社を作るなど、運用スキームをうまく活用すれば、中国全国の企業への貸付が可能となる変則的なやり方も可能であり、実務上実践されている。
■貸付金利
法律上、通常銀行金利の4倍まで貸し付けることが容認される。手数料の上限はない。
(江本 真聰)