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 日本企業の中国市場からの撤退ブームって本当?

2013年6月12日

日本企業の中国からの撤退がメディアを賑わせている。尖閣問題発生後、報道のトーンが強まったような気もするが、実態はどうなのか。

日本貿易振興機構(JETRO)のアンケート調査(「2012年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査)」、2013年3月)によると、回答企業1957社のうち、海外拠点保有企業はほぼ半数(49.9%)の977社だった。所在地は中国が最多で全体の73.6%を占めた。機能別に見ると、販売拠点を持つ企業が75.7%で、生産拠点を持つ企業59.6%、研究開発拠点を持つ企業18.1%だった。

これを国別に見ると、販売拠点では中国がトップで527社(複数回答、以下同)となり、米国(294社)やタイ(271社)を大きく引き離した。生産拠点も中国がトップで428社、以下、タイ181社、米国120社と続いた。研究開発拠点も中国がトップで106社となり、2位の米国(59社)を大きく引き離している。

今後3年程度の新規投資や既存拠点の拡充については、「海外事業の規模の拡大を図る」が前年度調査の73.2%から69.2%に低下した。大企業、中小企業とも同じ傾向が伺える。安倍政権によるデフレ脱却策に対する期待の表れかもしれない。

輸出拡大、新たに取り組みを目指すターゲット国・地域は、中国がトップで49.1%(複数回答)、以下、タイ40.6%、インドネシア38.2%、ベトナムと米国34.1%、インド29.7%と続いた。中国の首位は変わらないが、前年の調査(68.9%)と比べると19.8ポイント低下した。

「中国におけるビジネスリスクが高まった」と回答した企業は69.8%に達し、2年前の52.7%から17.1ポイント上昇した。そうした認識のもと、中国でのビジネス展開についても、「既存ビジネスを拡充、新規ビジネスを検討する」と回答した企業が2年前の77.9%から61.2%に低下する一方で、「既存ビジネスの縮小・撤退を検討する」は2.4%から7.5%に上昇した。

中国ビジネスの縮小・撤退を検討する最大の理由は、「カントリーリスクの高さ」が55%でトップ、「生産コストが他国・地域より高い」38.5%、「法制度の不備、運用が不安定」31.2%、「知的財産権の保護、代金回収に問題あり」18.3%などが続いた。これに対して、中国ビジネスを続ける最大の理由は「中国の市場規模、成長性」が69.5%となり、第2位の「すでに事業が確立し軌道に乗っているから」(33.1%)の倍以上になっている。

JETROの調査から、中国市場に対する日本企業の見かたが変わってきていることは、はっきりした。だが、“日本企業の撤退ブーム”と言えるほどの動きではなさそうだ。

とくに多国籍企業はそうかもしれないが、企業は最も人件費が安いところで人を雇い、最も製造コストの安いところ、公害規制のゆるいところで生産して、最も法人税率が低いところで納税する。企業の論理からすれば、きわめて合理的で当然のことだ。企業にとって、中国より東南アジアの方が魅力的であれば、移転するのは不思議なことではない。これは、別に日本企業に限ったことではない。ただメディアにしてみれば、対象が中国で、しかも日中関係がこうした状況にあるため殊更強調したいのだろう。

上海米国商会が2月に公表した中国ビジネスレポートによると、中国の監督管理や政策面での要因が米国企業にとって不安定要因となっていることが浮き彫りになった。調査を受けた420社のうち、生産拠点を中国以外の地域に移転した、あるいは移転の可能性があるとした企業が15%弱に達したことが明らかになった。

旧聞に属するが、首都圏を中心に129店舗を展開していた英国のスーパー最大手テスコが2011年8月、日本市場からの撤退を表明した。日本はデフレを背景に不採算の店が多く成長シナリオを描きだすのが難しかったことが理由とされており、中国や韓国、タイなどに経営資源を集中するという。

最近の話題では、中国の主要都市で営業していたヤマダ電機の南京店が5月31日、店を閉じた。進出からわずか1年での閉店となった。尖閣諸島の国有化に反対する反日デモで不買運動が拡大し売り上げが低迷していたとの指摘もある一方で、中国国内の家電市場の変化に加えてサプライチェーンの構築ができなかったことによる販売不振が背景にあるとの見方もある。

仮に、中国市場からの撤退があったとしても、普遍的な理由などない。

(窪田秀雄)

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