海外ビジネスコンサルティング

 JICAの中小企業海外展開支援とコンサルティング会社の有効活用

2015年3月20日

独立行政法人国際協力機構(JICA)が中小企業支援事業を平成24年に開始してから、まもなく3年が経つ。中小企業の海外展開支援は、JICA・外務省だけでなく、経済産業省や関連機関、地方自治体が連携をとりながら積極的な取り組みを開始しているが、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」における3つのアクション・プランの一つとして「海外市場獲得のための戦略的取組」が盛り込まれ、安倍政権が積極的に海外市場獲得と中小企業支援の姿勢をPRしたことから、さらに認知度が高まった。ここでは、JICAの中小企業支援事業を活用した海外展開について紹介する。

日本の中小企業が海外展開するには、海外展開を検討し始める「検討段階」から、検討を深掘りして調査の準備を始める「調査準備段階」、現地調査や事業の妥当性評価をする「調査段階」、さらに必要に応じてテスト事業実施や事業計画を改善する「実証・事業計画改善段階」といったプロセスを経る。これを表すと以下の図のような流れになる。

海外展開に向けた一連の準備プロセスのなかで、JICAの中小企業支援事業を活用できるのは図の赤枠でかこんだ3つの段階である。「調査段階」で活用できる代表的なメニューとしては「中小企業連携促進基礎調査」 、「案件化調査」 、「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」 が、「実証・事業計画改善段階」で活用できる代表的なメニューとしては「普及実証事業」 「民間技術普及促進事業」 等があげられるが、これらの支援メニューを活用するためには、通常、1年に2度ある応募時期に、事業案や調査計画をまとめた企画書をJICAに提出し、当該企画書が採択される必要がある。

JICAの事業に精通している場合を除き、JICAへの企画書作成を含む提出準備ではコンサルティング会社を活用することが一般的である 。JICA事業で実績のあるコンサルティング会社は、JICAの評価基準を理解しており、煩雑な提出書類一式を作成することに慣れている。このため、JICAで採択されるためには準備段階で何をしなければならないか、提案書にどの程度の情報を盛り込まなければならないか、調査後の展開シナリオをどうするかといったことを良く理解している。外国に強いコンサルティング会社は、進出予定先の現地の情報収集や相手方政府との協議調整や現地有力企業とのパートナーシップ構築支援も提供する。

JICAの中小企業支援事業の活用を検討する企業としては、まず自社にマッチするコンサルティング会社を選ぶことが、効率よく海外展開調査を進める重要なポイントになる。ここで、通常2つの問題が出てくる。まずコンサルティング会社に支払う料金、そして適切なコンサルティング会社の選択である。

コンサルティング会社の料金体系は、各社様々だが、JICAの中小企業支援事業を活用して海外事業展開準備をする場合、JICAに企画書を提出し、採択されるまでの準備期間と、採択された後にJICAの委託事業として調査を実施する段階で支払い体系が異なるケースが一般的である。

下図に示すように、調査事業はJICAに採択されるとコンサルタントフィーがJICA委託費の「外部人件費」でカバーされるため、調査主体となる企業が負担する必要がない。しかし、準備期間は、JICAの委託費でカバーされないため、コンサルティング会社が不要と言わない限り、調査主体の企業がコンサルタントフィーを負担しなくてはならない。

次に、自社に合うコンサルティング会社を選定する方法についてである。ここで重要なのは、まずしっかりと自社分析を行い、海外展開準備を進める上で自社に足りないことを再確認することである。自社に不足している部分を理解し、そこを補完するコンサルティング会社と組むことによって、その後の調査を効率化することができる。

例えば、JICA中小企業支援事業に応募するための書類作成が難しい場合は、JICA中小企業支援事業に採択された実績を持つコンサルティング会社を選定することが望ましい。また、進出予定先の現地情報や事業パートナー候補に関する情報の収集で苦戦している場合は、対象国でネットワークを持ち、現地情報をスムーズに収集し、関係機関・企業との調整をできるコンサルティング会社と組むことで、準備期間だけでなく調査実施時においても効率的に進めることができる。

海外展開を検討している企業は、JICAの中小企業支援事業の活用と併せて、自社の強みや弱みを分析し効率よく準備を進めるため、コンサルティング会社を活用することも一つの方法である。

(高山 恵)

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